価格: | ¥501 |
著者: | 海音寺潮五郎 |
出版社: | 角川書店 |
発行年月: | 1987年08月 |
ISBN: | 9784041273173 |
種類: | 文庫 (角川文庫) |
在庫状況: | |
天正8年離反の荒木、別所氏を落とし、秀吉は大厄難を越えた。今や彼の地位は明智光秀や、丹羽長秀をしのぎ、もはや彼の上位には柴田勝家がいるだけであった。男の大難とは常にこのようなものであった。一難を越えるごとに成長していく、その成長は難度に正比例する。秀吉は荒木村重の言葉を思った。「上様が天下を平定なされた後、働かせ所のなくなった者に、かわらず大国をあたえて飼うておきなさるであろうか」藤吉郎の身分なら安心していてよい。筑前守となり、こうまで大身となり、羽ぶりがよくなってはうっかりとはしておれぬ、二工夫も三工夫もせぬばならぬ。秀吉は今、守りの重大なことを知った。