江戸で遊学している楯岡研次郎のもとに、実家から、病に倒れた兄に代わり、仇討ちを果たせとの文が届く。その命に深く懊悩する研次郎。なぜならその仇とは、藩校時代の恩師であったからだ。奇しくも巷では、赤穂浪士による吉良邸討ち入り事件が起こり、研次郎の仇討ちはその赤穂浪士たちと奇妙に絡み合うことになる。武家に生まれた者の定めと己に言い聞かせ、幼馴染みと共に恩師を討つ旅に出た研次郎が、旅路の果てに知った哀切きわまる真実。不条理な仇討ちに、己を問い続ける若き剣士の物語。