故郷を離れ、遍歴の果てにたどり着いた東京で、ジゴロとして生きる若者イーブ。生来の美貌に、ジムで鍛えあげた肉体を鎧い、女にも男にも快楽を与え続ける日々。感情のすべてを断ち切り、過去のいっさいを捨て去って、“性のサイボーグ”になりきろうとするイーブは、空っぽの心で擬似愛を演じ、タブーなき性の饗宴を繰り返す。忘れようとする記憶の深淵から立ち昇る夏芙蓉の花の香と、群れ集う金色の小鳥ー。全編を覆う大胆な性描写の底流に、存在の根源にさまよう若者の不安と孤独、喪失と再生を描き出した異色長編。