十六世紀の終わり頃、フランス国王アンリ三世は、富と権力を掌中にしつつ、その上「不死の秘密」を我が物にしたいと願っていた。かのノストラダムスの詩に、自分が殺されるとも解釈できる記述があったからだ。そして「不死の理はヴェネツィアにあり」という託宣を得る。ヴェネツィアに派遣されたのは、パリ王立教授団の一学徒で生真面目なレオン。だが「アドリア海の真珠」と謳われるこの都で、彼が身をもって知ったのは、悪と背徳と裏切りと病と不幸ー。彼も、窮地に陥る度に救ってくれる無頼漢・ティリアットとともに堕ちてゆく…。