私たちは、自分の体を当然のことと思い、それ以上考えてみようとはしない。デズモンド・モリス博士は、人体という類ない景観の中に改めて自分を発見するという心躍る旅に招待してくれる。人体をいくつかの部位に分け、明快かつ興味深く私たち自身を克明に眺めることを可能にしてくれるのだ。頭の毛から足先にいたる旅の道すがら、２０に分けた図解豊富な各章で、人体の各部について、解剖・行動・進化・歴史・文化といったあらゆる角度からの吟味と考察がなされている。必ず議論を呼ばずにはおかない筆致で、モリス博士は明言する。いかに文化的バッジで、また身体的風俗で変容を図ろうとしても、人間は皆同じであると。私たちの身体と精神の健康が、過酷な都会的環境によってますますストレスを受けつつあるこの時代において、著者は、私たちが住むこの不可思議な生命体をどうかよく理解して欲しいと訴える。