アイリーンは、数年前に夫の遺産を処分してもらって以来、弁護士マイケルに横恋慕し、公の場でも彼の姿を追い求めるようになった。そんなある日、帰宅したマイケルは無残に変わりはてた妻の死体を発見した。検死の結果、死因はナイフと金鎚による傷と推定された。被害者を尾行していた私立探偵が警察に連行され、すぐに犯行を自白した。ところが男は、自分が殺人を犯したのはアイリーンに依頼されたからだと主張したのである。アイリーンは言下にそれを否定し、警察の追及にたいして薄笑いを浮かべてみせた。訴追側の弁護士ヘレンは、そんなアイリーンの邪悪さに魅入られたように、しだいに事件にのめりこんでいくが…。英国女流の大型新人が、残虐な殺人に秘められた愛と憎悪を精緻な心理描写で浮き彫りにする傑作サスペンス。