奈良・東大寺二月堂、古都に春を呼ぶお水取りの行事が、荘厳さのなかに、いまクライマックスを迎えようとしていた。大学時代の友人、由美、志保子と見物に来ていた香坂季代は、雑踏の中でチョビ髭の男に風呂敷包みを押しつけられた。明朝まで預ってほしいというのだ。二人に包みを預けた季代は、旧遊廓・美芳館で売り立て目録を入手し、その中に正倉院宝物・〓鏤尺を見つける。ホテルに戻ると、由美が包みとともに何者かに連れ去られたという。包みの中身は何だったのか？秘宝をめぐる連続殺人が、いま始まった！