価格: | ¥854 |
著者: | 辻真先 |
出版社: | 光文社 |
発行年月: | 1996年05月25日頃 |
ISBN: | 9784334071936 |
種類: | 新書 (カッパ・ノベルス) |
在庫状況: | |
昭和二十年三月、西竹一中佐は戦車隊の隊長として硫黄島にあった。米軍の攻撃は凄まじく、砲声銃声の中、兵士たちの肉体は四散した。その戦場の咆哮は、「バロン西」と呼ばれて、馬術競技に優勝したロサンゼルス・オリンピックのどよめきを思い出させた。一瞬、愛馬ウラヌスのいななきが聞こえた。だがウラヌスは老いて東京にいた。いや、老いたのはウラヌスだけではなかった。97式中戦車もすでに旧式化し、米軍戦車に蹂躪された。『ウラヌス…』呟いて西は、懐ろに入れた愛馬のたてがみを撫でた。そして、潔い最期を迎えるべく、歩を進めた。