滝波友男との結婚を間近にひかえ、大徳寺明美は幸せで一杯であった。が、その結婚を中傷する手紙が届けられた。明美の心の片隅を一陣のすきま風が吹き抜けていく。それは半年前、宮崎の鵜戸神宮で失踪した元の恋人、佐々木直道のことであった。突然届いたその一通の手紙をきっかけに、忘れようとしていた失踪事件がにわかにクローズ・アップされてきた。真相を追う明美の周りで、つぎつぎと起こる血なまぐさい惨劇。明美の依頼を受けた私立探偵片野好夫とその助手望月圭子は、光溢れる南国の日南海岸へ飛んだ。錯綜する愛憎劇の果てに突き止めた意外な犯人、だが完璧のアリバイが…。-時刻表と人間心理の盲点を衝いた大胆なトリック。書下ろしトラベル・ミステリ。