中世後期、ヨーロッパは商業の復活を迎えた。そこにはどのような制度的基盤があったのか。本書はこの問題に、ゲーム理論に基づく制度分析という新しい方法を用いて取り組んだ。著者は「制度」を、ルール・予想・規範・組織が相互に関係したシステムで、人々の行動に一定の規則性を与えるもの、と考える。マグリブ貿易商、ハンザ同盟、都市国家ジェノヴァなどを対象に、史料に基づいて制度のゲーム理論的モデルを構築し、制度の安定性と機能、そして制度変化の可能性を分析する。上巻には、「第1部 準備」から「第3部 歴史的過程としての制度のダイナミクス」の第8章までを収録。