有形無形の“もの”の交換により人々を空間的・時間的に結びつける市場は、韓国では今なお生活の中に根づいている。そうした市場の歴史的な変遷と実態を、そこで生活する人々の視点で描いた本書は、朝鮮半島の在来市場についての貴重な記録・研究であり、市場の観察を通して韓国社会を浮彫りにした斬新な試みである。著者は歴史学、文化人類学をはじめ、地理学、経済学、社会学など周辺諸分野の成果を合わせて半島における市場の成り立ちを説き、それが社会の中で果たしてきた役割を明らかにする。民俗と社会の宝庫である市場の歴史を体系的にまとめ上げた本書は、東アジアの文化を知る上でも示唆に富む。大韓帝国末期から現代にいたる貴重な写真・絵画資料を収める。