ヘレンは母リズを亡くして数日後、父から衝撃的な事実を告げられた。リズは実の母ではない、と。彼女を産んだのは父が若いころクレタ島で出会ったギリシア女性で、出産後まもなく、この世を去ったという。ヘレンはルーツを求めて、実母の故郷に旅立った。父の古い地図を頼りに歩きに歩き、実母の家があるヴロンダ谷まであと一歩のところまで来たとき、道に棒が渡してあり、行く手を阻まれた。ヘレンが実母の名を出したとたんに村の男は顔色を変えた。やがて現れた谷の地主ディミトリは、頑として立ち入りを拒否する。彼の危険なほどの男らしさに圧倒されながらも、ヘレンは引き返すことだけはしたくなかった。