古い熱力学が現実には起こらない可逆変化に対してのみ定量的な理論を展開しえたのに対して、本書は、現実の不可逆変化そのものを対象にしている。ブリュッセル学派の打ち建てたこの理論体系によって、熱力学的な概念の理解はきわめて容易になり、またその統一的基礎も明らかにされた。いまや、この体系は化学反応、輸送現象などの熱力学的取扱いの基本的方法としての確たる地歩を確立している。この第一分冊では、熱力学の基本定理の導入に続いて、エントロピー生成、相変化、熱力学的安定性、臨界現象などについて明快な解説がほどこされている。