本書の中心テーマである強制収容所の売春施設設置は、ナチスが絶滅戦争と呼んだ対ソ戦を軍需生産の面から支えるための方策の一つであり、軍需生産に動員された強制収容所の収容者の労働効率向上が目的だった。つまり戦争の遂行手段の一つだったのであり、この点でドイツ国防軍用の売春施設と同じように、日本軍が設置した「慰安所」と同列にあるといえる。本書はその観点からは、旧ユーゴスラヴァア地域で起こった集団強姦や第二次世界大戦直後のドイツにおける連合軍による強姦に関する出版物と同じく、ここ数年ドイツフェミニズムが関心を向けている「戦争と性」というテーマにつながるものである。