価格: | ¥16500 |
著者: | 細江光 |
出版社: | 和泉書院 |
発行年月: | 2004年03月 |
ISBN: | 9784757602519 |
種類: | 全集・双書 (近代文学研究叢刊) |
在庫状況: | 在庫あり |
谷崎文学には、数多くの謎がある。エディプス・コンプレックス、マゾヒズム、フェティシズム、窃視症、糞尿愛、女性化願望など、異常性欲と異常心理。江戸っ子でありながら、関西を愛するようになったこと。西洋崇拝・イデア論から日本回帰し、また西洋崇拝に戻ったこと。また、谷崎には、二重人格的な所があり、立派な紳士である面と幼児退行願望、極めて真面目・律儀な面と、悪への誘惑に抵抗できない面、明るく積極的・享楽的・貪欲な面と、暗く憂鬱で死の恐怖に苛まれていた面があった事実、などなど。本書は、これらの傾向が、潤一郎の幼少期における父母との葛藤からどのように発生し、個々の作品、表現の細部に現われているのかを、系統的に分類・整理し、深層心理学的に跡付けることに成功している。同時に本書は、谷崎が、巧みなイメージ操作で読者の無意識に働きかける優れた芸術的テクニック(「深層のレトリック」)の秘密をも、解き明かしてくれているのである。