配偶者や恋人からのDV(ドメスティック・バイオレンス)にさらされている女性は、さながら嵐の海に翻弄される小舟のように、予測不能な暴力のなかで揺れまどいながら、しだいに友人からも肉親からも遠ざかっていきます。漂う船をつなぎとめ、安全を確保するために錨が必要であるように、彼女たちにも、つながりの感覚と自尊心を支えてくれる錨(アンカー)のような存在が必要なのです。彼女たちはなぜ、自分の受けている暴力をたいしたことではないかのように言うのでしょう?かすかなサインを発しながらも、次の瞬間にはあなたから距離をおこうとするのはどうしてでしょう?自らもDV被害の体験をもつ著者は、ある女性がアンカーになるまでの物語を織りまぜながら、これらを解き明かし、加害者から逃げ出す力を剥ぎ取られ、人を信頼する力をも失いつつあるDV被害女性を支えるために必要な原則(やるべきことと、やってはならないこと)をわかりやすくまとめています。わが国においても、密室化した家庭内で起きるDVが社会的認知を得て、ようやくその過酷な実態を現し始めた現在、DV被害女性に関わるすべての支援者、とくにご家族や友人の方々に、繰り返し読んでいただきたいガイドブックです。