京都室町の老舗有東商店はいま崩壊の一途をたどり始めた。創業以来百年、１２代社長有村東兵衛の時にその危機は訪れた。彼は戦後特需景気の波に乗り会社の規模を拡張し、多額の私財を蓄え，財界の雄として君臨した。そして、京都を国際都市にのし上げようと遠大な計画を膨らませていた。だが、彼が今日あるのは裏で数々の悪業に手を染めていたためでもあり、失墜させるべく虎視眈々と狙う者も少なくなかった。老舗の内部を鋭く抉る問題作。