「久見」-俺は静かに彼の名を呼んだ。「…一緒に、逃げよう」久見はキュッと唇を引き結び、かぶりを振った。「そんな言葉、信じない」…塚原泰史は、不良グループのボスの命に従い、クラスメイトの久見一浩をボスの部屋へ連れていった。寝室でボスに抱かれる彼の悲鳴を聞きながら欲情する自分に、とまどう泰史。彼に触れ、しだいにその想いがかたちを帯びてきた時、泰史は彼と旅立つ決意をする。たったひとつの“恋”を奪い返すために-。表題作『恋』をはじめとする、甘く、激しく求めあう辛口ラブ・ストーリー４編を収録。