タブロイド紙の編集部で働くギャビーは、金曜日の夜、デスクの引き出しに置き忘れた財布をとりにオフィスへ戻った。すると、いつもは使われていない部屋から明かりがもれている。エイドリアン・ラクロスが来ているのかもしれないわ。インターナショナル・イントルーダー社の社主に就任して半年、一度も部下の前に姿を現したことのない、噂の主が。美しいブロンド、ブルーの瞳、完璧なまでの彫りの深い顔だち。うつむいて書類に見入っている。だがそのとき、ギャビーは奇妙なことに気づいた。デスクの上のガラス板に、その男性の影が映っていないのだ。こんなことってある。彼女はわが目を疑った。