ここはどこ？ニコルははっとして目をあけた。そして、自分が抱きかかえられ乱暴に運ばれているのに気づいた。そうた…雪嵐に遭い、道に迷って岩場から転落してしまったのだ。すると私は気を失っていたのだろうか？ニコルはずきずき痛む右脚を気づかいながら、自分を抱いて歩いている男の顔をそっとうかがった。黒々としたあご髭に雪がかかり、口もとは硬く引き結ばれている。「こんなところをうろつくなんて、いったいどういうつもりだ！」男は吠えるように言った。その射抜くようなまなざしに、ニコルはたちまち凍りついた。