ナポレオンの台頭にヨーロッパ中が揺れていた１８０８年１月。スコットランド随一の貴族アソール公爵の娘エリザベスは、例年どおり、家族とロンドンで冬をすごしていた。社交界は楽しんでいるけれど、恋愛ゲームをする気はない。だって、私は本当は結婚しているのだから。若すぎた５年前、誰にも知られずに…。衝動的な結婚は、第一夜にして破綻してしまった。心から愛していた幼なじみのエヴァン、いにしえの海賊の末裔。彼もまた傷つき、軍隊に入って遠くへ去った。エヴァンは死ぬまで知ることはないだろう、あの日小さな命が生を受け、今すくすくと育っていることを。しかし、ロンドンの霧の魔法が思いがけない再会をもたらした。そしてエリザベスの苦悩のときが始まる。禁じられたダンスを踊った代償はあまりにも大きく…。