トレーシーは運悪く、噂のプレーボーイの優しさを知ってしまった。こんなことを母が知ったら、きっと気絶するわ！トレーシーはバスローブのベルトをきつく締めながら、うめいた。出会ったばかりの男性の家に泊まるなんて…。その日は、トレーシーにとって記念すべき日になるはずだった。いよいよ念願のクリスタル・クリークにやってきたのだから。それなのに町の四、五キロ手前で、鹿と衝突してしまったのだ。視界は最悪。降りしきる雷雨のなか、幸運にも、町の獣医マニー・ヘルナンデスが通りかかった。瀕死の鹿をなだめる彼の優しい声に、トレーシーも落ち着き、とりあえず鹿と一緒に彼の家に向かうことになった。外は嵐、車は壊れ、いったい他に選択肢があっただろうか…。しかし、電話で話した親友セリーナの言葉が頭から離れない。「マニーはすてきな男性よ。でも、気をつけてね」本書では、ブーツショップ「ラ・エレンシア」の共同経営者で、セリーナの親友トレーシーが、ついに登場します。彼女は観光牧場のなかに新しい店をオープンさせようと、意欲満々でした。しかし町の近くでいきなり鹿をはねてしまい、それが縁で獣医マニーと知り合います。なのに、ババのある計画から、育つかに見えた恋の芽は摘みとられそうに…。