価格:¥1571
著者:山根美奈
出版社:メディアファクトリー
発行年月:2000年09月
ISBN:9784840101387
種類:単行本
在庫状況:
母の物語を書いて欲しいと依頼されたのは、三男の神田善啓氏からだった。「これはまだ兄貴には内緒です。『行ける』となったら会って貰います」兄貴とは、シンガーソングライターの小椋佳氏である。取材は、善啓氏の姉から始まり、兄嫁、妻、叔父、従兄弟、元従業員の方々、生家の近所の方々と、順々に続き、千葉の海神に墓参りにも行った。母について語られる思い出は、どれも動的であり、ハイテンションな逸話であったが、次第に、みんなの記憶の陰にあった父今之助の姿が浮き彫りになっていった。動と静、軽と重。その、両極端な性格の二人の間に子供たちが居り、“千世香”という仕事場があった。そしてそれは、神田紘爾という人物が、銀行員と歌手の二足の草鞋が履けた訳をも明瞭にしたのである。今之助とトクは三人の男子を儲けた。初めて一同で語った記憶には時差があり、点と点を繋げていくと、更に確かな父母の実像となった。その上に興味深かったのは、三人が三様に両親の因子を受け継ぎ、それが一人の歌手小椋佳を作り上げている事実を目の当たりにした事だった。どの側面にも母の面影があったが、それ以上に父の影響が色濃かった。
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