「あんたが可哀想やから嫁いだあんたの世話にはなれない。あんたが可哀想やから」そう言い残して自分でさっさと手続きを済ませ、老人ホームに行った母。母を老人ホームに送って泣きながら帰ったあの日のことを忘れることは決してない。悔いは澱のように心の底に沈んだまま十年の歳月が過ぎた。母を老人ホームに送った直後、私はガンの宣告をうけ闘病生活が始まる。母が老人ホームで過ごした年月は私がガンと闘い続けた歳月でもあった。老人ホームの母と癌と闘う娘の十年。