価格: | ¥506 |
著者: | 有野白雲 |
出版社: | 彩図社 |
発行年月: | 2003年05月 |
ISBN: | 9784883923380 |
種類: | 文庫 (ぶんりき文庫) |
在庫状況: | |
飄々と淡々とした世の中で、情の流れる時代があった。みんなの瞳がキラキラと輝いて、綺麗な笑顔をしていた。情は自転を繰り返しながら、発散し続け、また不特定の人々から、その恩恵を受け継いでいた。打算なき情を捧げるから、真の愛が受けられる倫理を知った。子供時代の赤貧の中で、噴煙に咽び泣く霧笛が教えてくれた。波飛沫の先に母の顔が浮かんでいた。それがごく自然な輪和だった。白黒の時代が終わって、カラー社会の到来と共に、情が稀薄になった。老人たちも、夫婦も、親子も、みんなが、この情を忘却してしまった。情とは、謙虚なる思いやり、優しさ、愛情、それに情熱のことである。情に勝る結合はこの世に存在しない。