本書には、少なくともざっと目を通す以上の価値がある3つの特徴が備わっている。第1に、本書は、心理学と哲学という異なった背景をもつ2人の研究者による協同作業である。この2名が協同で行ったことは、この領域において影響力をもった因習的な英知からの解放と、推理行動をより広範な視点から見ようというアピールである。この本を推薦する第2の理由は、本書は単に「推理」の文献だけではなく、「意思決定」の文献も紹介しているからである。意思決定は、本質的には演繹というよりは確率に関係しており、この分野だけに適用される複雑な数学的方法論を備えるようになってきている。しかし、同一の経験的データと取り組むのに演繹と確率という両方の伝統に頼ることは、大胆な一歩とみなされるかも。第3の興味深い点は、1つの研究(Wason&Evans,1975)のなかにある。この研究は最終章で議論されているが、その結果は、人々の行為や決定の実際の原因と彼らによるその理由の説明とに注目すべきずれがあるということを示している。