「私の母の話」は、140名を越える筆者が一様に母を慕い、そして母に感謝を捧げることばを献じています。戦後、夜なべをし、或いは行商をし、大切な着物を売って子どもたちを育てた母親。子どもの才能を見出して教育をしてくれた母。この本の話は、母親の愛が共通項としてあるものの、一篇一篇の話はどれ一つとして同じものがなく、時代、家柄、意識により異り、女性史としての面をもつと同時に、個人史としての核が読み取れます。祖父母、父母、子、孫…と、自分を鎖の一輪と位置づけ、女性が生命をつなぐ役割をになっている自負と責任感が強く行間にあふれています。