フランス第三共和政下の売春は、社会・経済構造の変化の影響下で、男たちの性的な感性も変化し、精液の排水溝ではなくなっていった。ブルジョワ風の家庭的親密さが広まり、ある種の性の粗略な扱われ方は次第に姿を消し、性関係に心情という粋な味つけが求められるようになった。娼婦の許へ足を向けることは、望ましくないが次善の策と考えられるようになり、この場合にも、相手との人間らしい出会いを大切にしながら性的渇きをいやそうとした。売春婦との関係においても、性交そのものよりもエロチスムが大きな意味をもつようになった。〈最古、永遠の職業〉と〈性的欲望〉の変容を追求した売春の社会史。