「ハートはあるのよ。でも、それは傷ついたことがない、血も流さない、叫びもしない。ただ、歌ってるだけー」それが、場末のキャバレーでサックスを吹く若きジャズマン矢代俊一に与えられた啓示だった。同時に、彼のまわりには、傷つき血を流し、叫びながら去ってゆく男と女の群像があった。ジャズの名曲“レフト・アローン”そのままに、誰もがひとりぼっちで去ってゆくのだ。やがて、彼の内で何かがはじけ、熱を生んだ。その時。