市場に並べられた商品からは単にその国の経済状況だけでなく、たとえば食料品からは食文化はもちろん、気候や植生さらには農業政策まで、また衣料品からは人々の色彩感覚からファッション情報まで、実に幅広くその国の文化や生活ぶりをうかがい知ることができます。さらに市場で繰り広げられる売り手と買い手のやりとりの様子は、その国の人間関係を考える上で格好の材料を提供してくれます。市場はまさしくその国の「鏡」の役割を果たしています。本書は、こうした「市場」そして「商人」を中軸にすえて、発展途上国（非欧米世界という意味）の消費生活の多様性を描き出すことを狙いとしています。本書で展開される各報告からは、伝統的なバザールや小売り店などは根強く生き続け、買い物や消費生活形態には宗教、文化や伝統的な価値観や慣習が反映されているという様子が伝わってくるはずです。