価格: | ¥4180 |
著者: | 吉田俊純 |
出版社: | 校倉書房 |
発行年月: | 2000年04月 |
ISBN: | 9784751730706 |
種類: | 単行本 |
在庫状況: | |
兄を超えて水戸藩主になった光圀は、これを憂えて兄の子に家督を譲った。そのためには自分の血統の絶えることも辞さなかった。代わりに、光圀は名を伝えることを望んだ。聖人として敬われることを欲したのである。光圀は最高の存在と評価されるべく、つねに努力したに違いない。伝えられるように、道徳的に厳格であり、権威に屈せず、民百姓に仁政を施そうとしたのである。しかし、光圀を神格化したり、人格的に完成した理想的な人物ととらえるのは間違いである。事実としての光圀は、学者としても藩主としても、矛盾に陥り解決できず、悩み苦しんだのである。そして、南朝正統論にしても、農民に検見を委せたことにしても、最終的には独断を押しつけたのであった。光圀は悩み苦しんだ人としてとらえられるべきである。そのほうが真に人間的でもあろう。そうした光圀の学問的業績としては、儒教的な中国文化と武士的な日本文化とは矛盾することを、最初に自覚した人といえるのではないか。以後、水戸学において和漢の折衷は最大の難問となる。