マスメディアが仕掛け、人びとがそれに応えるかたちで空前の過熱ぶりを見せている「健康ブーム」。テレビに雑誌、街頭の広告からスーパーの売り場にいたるまで、なんらかの栄養学的蘊蓄に遭遇しない日はもはや一日もない。病への不安があたかも集団強迫と化し、無数の癒し系グッズや「体にいい」健康食品が異常なまでに売れつづけるのはなぜなのか。「健康」を文化的・政治的言説としてとらえながら、それを成立させた近代的なメディア空間の発生を、身体をめぐる医学・生理学的眼差しの変容、公衆衛生思想の運動と表象、総力戦にともなう人的資源の動員などの歴史にたどって現代を逆照射する、アクチュアルで実践的な日常性批判の試み。