水田農業にとって最も重要な課題は、農地の維持・管理という点よりもむしろ、将来を担っていく若い農業者をどのように確保していくかにある。農業の抱える今日的諸問題に対して、環境保全や資源管理といった側面からのみ対処していくことは、新たな農業者の参入を促す条件整備とはなり得ない。将来の農業の中心的担い手となっていくような経営の育成・確保と、その経営発展への支援を基軸とした政策を打ち出していくことが重要である。そして、そこでは、経営者の自由で積極的な活動を促す経営環境の整備とともに、経営者の能力や経営管理の合理性を高めていくような対策を講じていく必要がある。本書は、このような観点から、水田作経営を主たる対象に、経営管理の合理化のための理論、方法について考察したものである。その場合、本書においては、規範的に最適な経営計画や経営対応を提示していくという接近方法をとるのではなく、現実の経営者の経営行動にまず注目し、そこから水田作経営の経営管理に共通する特徴点や合理性を把握するようにした。