「あなたのパパは今日も遅刻よ。どこで何をしているのかしら」モリーはベビーベッドの中のあどけない笑顔に語りかけた。父親のサムには定時に迎えに来るように注意もしたし、保育園の規則は知っているはずなのに。牧場の仕事が忙しいのだろうか。サムが生後二カ月の娘、ラスを連れて預かってほしいと頼みに来て四カ月がたつ。地元での彼の評判は最悪だが、モリーは信じたくなかった。それよりも、ラスにだけ見せる、あの甘く、優しい瞳が気になった。彼は決して悪い人じゃない。いつの日か、わたしもあんな目で見つめられたら…。だが、ほのかに芽生えた夢は、やがて跡形もなくしぼんでいく。モリーはこのときまだ、サムがなぜ彼女の保育園を選んだのか、そのわけを知るはずもなかった…。