誰の目も気にせずに、ふたりで一緒に暮らしたい-。香野康広と市麻勝久は高校卒業後、故郷を飛び出して東京で同棲生活を始めた。六畳一間の古い部屋、ひとつきりの洗面器をかかえて通う銭湯。お金はなくても、愛でふたりは満たされていた。しかし、生活をリアルにみつめる康広と、夢を追う勝久は次第にすれ違っていく…。若さゆえに傷つけ合ったことが、美しい思い出に結晶する瞬間がある。“今”を生きる大人たちに贈る緒方志乃の切なすぎる物語。