キリスト教哲学者ヨゼフ・ピーパー(1904-97)の主著『余暇と祝祭』を紹介するとともに、余暇の源泉としての祝祭の意義を考察する。ロシア革命やナチズムに象徴される労働管理社会から、ますます先鋭化する「労働世界」に直面している現代の人々が、真に解放されるための「余暇とはなにか」が問われている。1部ではピーパーの大学論や哲学に関する著作を通して、いかに自由学芸や教養が文化の基礎となるのか、さらに今日の生涯学習の意義を考察する。2部では『余暇と祝祭』を詳細に紹介し、祝祭を源泉として展開してきた余暇(レジャー)の本質を考え、「文化は宗教の受肉である」ことを明らかにした。3部ではわが国の神話や儀礼をはじめ和歌集や俳諧など日本文芸の様々な伝統を紐解きながら、祝祭や自然を崇めつつ結晶していく多様な文学表現を「文芸と宗教の一如の道」と捉え、そこに躍動している人々の祭りと遊びの豊かさに光をあてる。