「小平太様にさし上げるものがございます」そう言ったおひろの方は、四半刻して白無垢の夜着に着がえ、含羞をたたえていざなったー前将軍家慶の子をもうけたおひろの方と紀州藩付家老・水野忠央の謀略の密命を受けた小平太に、１０年前の時が戻った…。列国が開国を迫る徳川末期、１４代将軍の座を巡り水戸・一橋党と紀州・南紀党の、忍びを巻き込んだ熾烈な暗闘が、今、始まる。