フィービー・ショーは、ノースカロライナの小さな田舎の村で朝食つき簡易宿泊所を経営している。ある日、彼女は常客のひとりの紹介で、一カ月の滞在予定で初めての客を迎えることになった。ガス・ガラノスー詳しく素姓も知らされないまま気軽に引き受けた客だったが、彼女の目に映るガスは、やってきたときから、にこりともしなければ、ろくに口もきかない男だった。他の泊まり客もなく、黒いひげをたくわえた不機嫌な男に、彼女は気づまりを感じずにはいられなかった。一日中部屋にとじこもっているかと思えば、出かけたまま、夜おそくまで帰ってこないこともある。なんとかして宿の規則に従わせようととするフィービーに、彼はぞんざいな受け答えで、無視を決めこんでいる。フィービーの怒りは日ましにつのり、いつしか我慢も限界に達していた。